ひな祭りが近づくと、「そろそろ飾らなきゃ…でも正しい飾り方ってどうだったっけ?」と毎年少しだけ迷ってしまう私。特に子どもが生まれてからは、ひな人形の飾り方や片付けのマナーが気になるようになりました。実家ではなんとなく母がやっていたけれど、自分が“お母さん側”になると、ちゃんと知っておきたい気持ちが強くなるものですよね。
この記事では、ひな人形を飾る時期や場所、片付けのタイミングまで、忙しい家庭でも迷わず準備できるようにまとめました。体験談も交えながらお伝えするので、今年こそは安心して桃の節句を迎えたい方の参考になればうれしいです。
ひな祭りとは?
由来と歴史
ひな祭りは、平安時代に行われていた「上巳(じょうし)の節句」がルーツです。当時は、季節の変わり目に災いが起こりやすいとされ、人々は“形代(かたしろ)”と呼ばれる紙の人形に自分のケガレを移し、それを川に流して身を清めていました。これが「流しびな」として今も一部の地域に残っています。
貴族の間では、幼い女の子がお人形遊びをする「ひいな遊び」が広まり、のちにこの“遊び”と“厄を払う風習”がひとつになり、ひな祭りが女の子の健やかな成長を願う行事へと発展します。
歴史を紐解くと、華やかな行事の背景に 「子どもを守りたい」という親の深い願い が込められていることが分かります。
私自身、子どものころに地域の神社で流しびなを見た記憶があり、紙の人形が静かに川へ流れていく様子がなんだか神秘的で、不思議な気持ちになったのを覚えています。大人になってから思い返すと、あれも“無病息災を願うための風習”だったのだと、より深く感じられるようになりました。
桃の節句と呼ばれる理由
ひな祭りが「桃の節句」と呼ばれる理由には、いくつかの意味があります。
まず、旧暦の3月はちょうど桃の花が咲く季節にあたり、春の訪れを象徴する花として親しまれてきました。桃は古くから“邪気を払う力を持つ木”としても知られており、悪いものから子どもを守る象徴として扱われてきたのです。
中国の故事にも「桃は魔除けとなる」といった記述が多く、桃の枝や花には、季節を彩る美しさだけでなく、見えないものから守ってくれる“お守り”としての意味も込められています。
私も毎年、ひな人形の横に桃の花を一枝飾るのですが、部屋の雰囲気がふわっと明るくなり、春の訪れを一番に感じる瞬間です。季節の花があると、お祝いの気持ちがぐっと高まり、家の空気まで優しくなるのが魅力です。
桃の花の淡いピンク色は“やわらかさ”や“しあわせ”を象徴する色とも言われていて、子どもたちの表情まで少し穏やかになるように感じます。こうした理由から、ひな祭りは自然と「桃の節句」と呼ばれるようになりました。
ひな人形の飾り方
飾る時期と手順
ひな人形を飾り始める時期は、一般的には「立春(2月4日ごろ)~2月中旬」が目安と言われます。寒さが少しゆるみ、「そろそろ春かな」と感じ始めるころに飾ると、季節の移り変わりも一緒に楽しめます。遅くとも、ひな祭りの1週間前までに飾っておくと、バタバタせずに行事を味わえます。
わが家では、「この週末はひな人形の日にしようか」と、カレンダーを見ながら夫と相談するのが毎年の小さなイベントです。午前中に掃除をして、午後からは子どもも一緒に箱を開けるところからスタート。箱にしまわれていた人形を久しぶりに見ると、大人の私でもちょっとワクワクしてしまいます。
段飾りの場合の基本の流れは、
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まず飾る場所を軽く掃除する
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毛氈(もうせん)を敷く
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段の台を組み立てる
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屏風を立てる
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お内裏様とお雛様を並べる
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三人官女、五人囃子、随身、仕丁の順に配置する
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ぼんぼりや菱餅、桜橘などの道具類を並べる
という順番が基本です。説明書が付いている場合は、細かい並び順はそちらを優先すると安心です。
小さい子どもがいると、飾りを「持ってみたい」「触ってみたい」と手が伸びがちですよね。わが家では、繊細なパーツには触らないルールにしつつ、箱から出す係や毛氈を広げる係など、“子どもにも任せられる役割”を作るようにしています。親だけで全部やってしまうよりも、「一緒に準備したね」という記憶が残る飾り方の方が、子どもにとっても大切だなと感じています。
ガラスケース入りや親王飾りなら、段の組み立てがいらないので、忙しい家庭でも取り入れやすいです。「飾るのが大変だから」としまい込んでしまうより、無理のないスタイルで毎年飾れる方が、長い目で見ると続けやすいなと思います。
飾る場所の選び方
ひな人形を飾る場所を選ぶときは、「直射日光・湿気・風が当たらない場所」が大前提です。窓際で日当たりが良すぎる場所だと、人形の顔や衣装が日焼けしてしまうことがありますし、結露しやすい場所はカビや傷みの原因になります。
理想は、家族が自然と目に入るリビングや和室の一角。ただし、暖房の風が直接当たる位置や、エアコンの真下は避けた方が安心です。私の家では、リビングの少し奥まった棚の上に飾っています。テレビからも目に入るので、なんとなく家族の会話のきっかけにもなってくれます。
また、小さな子どもやペットがいる場合は、安全面も大事なポイントです。
・子どもがぶつかりにくい高さに置く
・通り道やドアの開閉で当たりそうな場所は避ける
・段飾りの場合は、土台がぐらつかないよう確認する
といった点を意識しておくと安心です。特に、歩き始めたばかりの年齢だと、ふとした拍子に倒してしまうこともあるので注意したいところです。
マンションや狭めのリビングの場合は、テレビボードの上やチェストの上に置ける親王飾りが扱いやすく、収納もコンパクトで助かります。「ここなら無理なく毎年飾れそう」と思える場所を選ぶことが、ひな祭りを習慣として続けるいちばんのコツだと感じています。
飾る場所が一度決まってしまえば、翌年からは迷わず同じ場所にセットできるので、「どこに置こう…」と悩む時間も減らせます。まずは家の中をぐるっと見回して、家族が集まる場所と、人形の安全を両立できるスポットを探してみてください。
片付けのタイミングとマナー
いつまでに片付ける?
ひな人形は、ひな祭りが終わったら「できるだけ早めに、天気の良い日に片付ける」のが基本です。目安としては、3月3日を過ぎたら1週間以内くらいにしまえると理想的だと言われています。
とはいえ、平日フルタイムで働いていたり、子どもの用事が立て込んでいたりすると、当日に片付けるのはなかなか現実的ではないですよね。
わが家でも、3月3日は子どもとちらし寿司を作ったり、写真を撮ったりで一日があっという間。片付けまで手が回らないことが多いので、「片付けは次の土日」とあらかじめ決めておくようにしています。そのときに気をつけているのが、雨の日ではなく、なるべくカラッと晴れた日を選ぶことです。
片付けるときは、
・窓を少し開けて部屋の空気を入れ替える
・人形の顔や衣装をやさしくはたきで払う
・乾いた手でていねいに触る
といったひと手間を意識すると、人形の持ちがぐっと変わります。忙しいときは全部を完璧にしようとせず、「今日は人形だけ箱に戻す」「週末に台や道具類を片付ける」というように、数日に分けて進めるのもおすすめです。
片付けが遅れるとどうなる?
昔からよく聞くのが、「ひな人形を片付けるのが遅いとお嫁に行き遅れる」という言い伝え。子どものころ、私も母にそう言われてドキッとした覚えがあります。ただ、これは科学的な理由があるわけではなく、「行事が終わったらきちんと片付ける習慣を身につけてほしい」という、しつけの意味合いが強いとされています。
実際のところ、数日〜1、2週間ほど遅れたからといって、何か良くないことが起こるわけではありません。でも、長く出しっぱなしにしておくと、
・ホコリが積もってしまう
・日光で色あせてしまう
・湿気でカビやシミができやすくなる
といった“人形そのものの劣化”につながる可能性があります。せっかく祖父母からもらった大切なひな人形だからこそ、できるだけきれいな状態で長く飾ってあげたいですよね。
私も一度、気づけばひな祭りから2週間ほど経ってしまい、「あ、まだ出したままだった…」と慌てて片付けた年がありました。それ以来、カレンダーに「ひな人形片付け」と書き込んでおくようにしています。“行事が終わったら一区切りとして片付ける”という習慣づけは、子どもにとっても「ものを大切にする気持ち」を育てる良いきっかけになると感じています。
もし今年遅くなってしまったとしても、「来年はこの週末に片付けよう」と予定を決めておけば大丈夫。無理なく続けられるペースを見つけて、家族なりの片付けのタイミングを整えていきたいですね。
まとめ|女の子の健やかな成長を願う
ひな祭りは、女の子が健やかに、そして幸せに成長していきますようにと願う、年に一度の大切な節目です。ひな人形の並べ方や片付け方にはいろいろな“決まりごと”があるように感じますが、実際には「完璧にしなきゃ」と身構える必要はありません。家族の生活リズムに合った形で、無理なく続けていけることがいちばん大事だと私は思っています。
この記事でお伝えしてきたポイントを整理すると、
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飾る時期は、立春を過ぎた2月上旬〜中旬ごろを目安に
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飾る場所は、直射日光と湿気・風を避けた、家族の目に入りやすい場所に
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片付けは、ひな祭りのあと、晴れて湿気の少ない日に早めに行う
この3つを意識しておけば、十分ていねいで心のこもったお祝いになります。
難しく考えすぎず、「今年はどこに飾ろうかな?」「どの日に片付けようかな?」と、家族で相談する時間も含めて楽しんでいけたら素敵ですよね。まずは今日、ひな人形を飾る場所をひとつ決めてみてください。
その小さな一歩が、毎年のひな祭りを“特別な家族の行事”として育てていくきっかけになりますように。娘さんやお孫さんの成長を思い浮かべながら、今年のひな祭りもやさしい気持ちで迎えていきたいですね。

